2025年12月3日
「スマホ新法」、正式名称「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が、令和7年12月18日に全面施行されます。監督機関は公正取引委員会です。
現在、スマートフォンの利用に特に欠かせないモバイルOS は、AppleとGoogleによる寡占状態にあります(iOS、Android OS)。
また原則的に、アプリのダウンロードは両社のアプリストア(App Store、Google Play)、アプリ内での課金は両社のシステム(Apple Pay、Google Pay)を通じて実施する必要があります。その他にも、WEBブラウザは両社のもの(Safari、Google Chrome)が標準のものに設定されている等といった状況があります。
こうした状態には、 AppleやGoogleの審査を受けたアプリだけが販売されるためセキュリティ上のリスクを低減できる、OSとアプリの機能連携が容易といったメリットがありますが、一方で、巨大IT企業が寡占状態でユーザーの「囲い込み」を行っており、自由な競争を妨げているという指摘もなされていました。
こうした状況を背景とし、スマホ新法は、スマートフォンの利用に特に重要なソフトウェア(モバイルOS、ブラウザ、アプリストア、検索エンジン)について、公正で自由な競争を促進することを目的として成立しました。
なお、本法律は欧州連合(EU)が先行して施行した「デジタル市場法(DMA)」を参考にしています。

公正取引委員会「スマートフォン利用者にとってのメリット」より
スマホ新法は、 AppleとGoogleに対して様々な規制を設け、「囲い込み」と呼ばれる様々な行為を禁じています。 ここでは、スマホ新法施行による変更点の中から、ユーザーにとって特に注目するべきものをピックアップし、注意点と合わせて概説します。 なお詳細については公正取引委員会のページをご確認ください。
現状、App StoreやGoogle Playからしかアプリはダウンロードできませんが、スマホ新法施行後は、AppleとGoogleは、両アプリストア以外でのアプリ配信を妨げることが禁止されます。
このため、 App Store、Google Play以外の新しいアプリストア等からのアプリのダウンロードも可能になる可能性があります。
App Store、Google PlayにおいてはAppleやGoogleによる審査があり、悪意のあるアプリ(マルウェア)が紛れ込むリスクが低減されていたため、そうしたアプリをダウンロードしてしまうリスクは考えもしなかった、という方も多いのではないでしょうか。
新しいアプリストア等ではそうした審査が十分になされない恐れがあるため、本当にダウンロードしてよいのかの見極めが必要になります。少なくとも、ダウンロードの前に一度立ち止まり、アプリストアやアプリの運営者情報等を確認する必要があります。
また、スマホ新法の施行にあわせて、メールやSNS等を通じて、アプリの紹介を装ってマルウェアをダウンロードさせるといった攻撃が増加するかもしれません。現状は両アプリストア以外からダウンロードできるアプリはほぼ無いため騙されるリスクは低くなっていますが、法施行後は注意が必要と思われます。

公正取引委員会「スマホ法概要資料」より(イラスト中、赤色の「指定事業者」がAppleとGoogleに該当します)
現状、アプリ内での課金はApple PayやGoogle Payを通じて実施する必要がありますが、スマホ新法施行後は、AppleとGoogleは、他の課金システムの利用を妨げることが禁止されます。
Apple PayやGoogle Payの事業者側の手数料負担は大きいため、これにより、多くの事業者が他の課金システムの利用を検討することが予想されます。それによって価格が下がる等、ユーザーにとってもメリットがあると思われます。
課金システムの多様化にともない、不正利用等の検知精度が低いシステムが使用されたり、返金時の対応がシステム運営会社によって異なってきたりする可能性に注意を払っておくべきと思われます。

公正取引委員会「スマホ法概要資料」より(イラスト中、赤色の「指定事業者」がAppleとGoogleに該当します)
現状、WEBブラウザはiOSではSafari、Android OSではGoogle Chromeが標準として設定されていますが、スマホ新法施行後は、標準とするWEBブラウザや検索エンジン等の選択画面の表示が遵守義務として課されます。
これにより、ユーザーは自分の希望に合ったブラウザを選択することが容易になります。
自己責任において、適切にブラウザごとの機能を比較し、選択する必要があります。
有害なサイトの検出やブロック、セキュリティパッチを含むアップデートの自動化、また、パスワード管理、自動文字入力といった機能の有無と、設定可能な項目等は、セキュリティの面に大きな影響があります。
可能であれば、ブラウザの選択を機会に、必要なセキュリティ機能を見直ししていただくことを推奨します。また、新しいブラウザのセキュリティ機能の設定方法についても十分に確認する必要があります。
また、未成年が使用する端末には青少年インターネット環境整備法によってフィルタリングが義務付けられているため、フィルタリング機能があるブラウザを選択し、適切に設定を行う必要があります。

以上、特にユーザーのセキュリティ面に影響があると思われる変更点について確認いたしました。
スマホ新法は具体的な禁止事項を通じて市場を開放し、ユーザーにとっての利便性等を向上させるものですが、セキュリティの確保、利用者情報の保護、青少年の保護、犯罪行為の防止等を考慮することが正当化事由と認められており、その場合、禁止事項に抵触してもかまわないとされています。
例えば、新しいアプリストアからダウンロードできるアプリに、マルウェアが含まれていた場合等に、 AppleとGoogleが該当のアプリを拒否するといったことが考えられます。
スマホ新法については公正取引委員会が関係事業者等と連携して運用するとしていますが、どのような事由が「正当化事由」として認められるのかが今後の焦点になると思われます。

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