JPAC 一般社団法人日本プライバシー認証機構ブログ

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消費者と事業者の信頼の中心に

  • ダークパターンの誘惑にご注意を

    2021年3月30日

     

    「WEBサービスを退会したいのに退会方法がなかなか見つからない」

    「アプリ上で公開するつもりのなかった個人情報が気づかないうちに共有設定になっていた」

    「サブスクサービスをトライアルで一ヶ月無料利用していたら通知なく有料のプランに切り替えられていた」

     

    こういった経験がある方も多いのではないでしょうか。

     

    消費者の行動を阻害したり、意図しない行動を誘発したりする

    悪質なインターフェイスは専門家の間で「ダークパターン」と呼ばれており、

    様々な種類が指摘されています。

     

    ダークパターンの多くは現在のところ日本国内では違法ではありませんが、

    欧米では規制をかける国や地域が出始めています。また、日本国内でも

    問題としてとらえられるようになりつつあります。

     

    事業者としては、WEBサービス運営において短期的な成果を追求するあまりに

    ダークパターンの誘惑に陥ることのないように留意しなければなりません。

    そうしなければ、ユーザーからの批判を受け、サービスの長期的な発展は

    難しい状況かと思われます。

     

    またもちろん消費者としても、意図せずに不利益を被ってしまうことのないように

    注意が必要です。

     


    ダークパターンの種類

    ダークパターンという用語はイギリスのUXスペシャリスト、ハリー・ブリヌル氏が

    2010年に最初に提唱しました。ブリヌル氏は自身が運営するサイト「DARK PATTERNS」にて

    ダークパターンの種類を紹介しています。

     

    とはいえ、ダークパターンには法律等での定義はなく、また様々な研究者から指摘がなされているため、

    ダークパターンの分類や、ダークパターンとそうでないインターフェイスとの境界はあいまいです。

     

    ここでは、ダークパターンと呼ばれることのあるUIの中でも、特に悪質と思われたり、

    日本国内のサイトで見かけることが多いと思われる種類をご紹介します。

     

    ごきぶりホイホイ

    ごきぶりホイホイ(Roach Motel)はブリヌル氏が提唱した名称ですが、

    他に閉塞(Obstruction)といった名称で呼ばれることもあります。

     

    例えばサブスクリクションモデルのサービスや会員サイト等において、

    申し込みは簡単だが、退会が困難になるような設計です。

     

    例えば、Amazonプライム会員の解約手続きがわかりづらいと欧米の

    消費者権利団体が苦情を出しています。

    TechCrunch Japan 2021年1月20日記事

     

    強制的継続

    無料トライアル等で申し込んだ場合に、トライアル期間が終了するときに、

    警告や連絡なしに有料プランへの切り替えが行われるような設計です。

     

    クレジットカードの明細等を見なければ有料プランに切り替えられたことに気づかない

    ため、不必要な支出が発生してしまう恐れがあります。

     

    ミスディレクション

    視覚的な効果を用いたり、言葉遣いを変更したりする等して、

    ユーザーに特定の選択を選ばせたり、特定の選択を選ばないようにしたりします。

     

    例えば、ECサイトで、プレミアム会員になれば割引価格で商品を購入できるとして、

    商品購入時にプレミアム会員になるかを尋ねる場合があるとします。

     

    大変極点な例として、ごくシンプルな尋ね方と、ミスディレクションで会員登録を促す

    尋ね方を作成しました。

     

    ミスディレクションの例では、プレミアム会員になればという条件が目立たなくなっており、

    割引価格で購入できる旨だけを強調しています。

     

    また、「はい」の選択肢を目立つようにする一方で、

    「いいえ」の選択肢の文字色を大変薄くしており、気づきにくくしています。

     

    また、選択肢の言葉を「もちろんです」と「いいえ、定価でけっこうです」として

    いいえの選択肢を選びづらいような言葉使いにしています。

     

    上記の画像は誰が見てもダークパターンだと考えるように極端な例として

    作成しましたが、ダークパターンかそうでないかの境界にあるような事例は

    ネット上で見かけることも多いかと思います。

     

    偽装広告

    クリック数を稼ぐために、他の種類のコンテンツやナビゲーション等を装った広告です。

     

    分かりやすい例として、ニュースアプリ上で偽装広告が出されていた場合のイメージが

    下記の画像になります。

     

    まるでニュースのひとつのように広告が並ぶ、というような場合が偽装広告に当たります。

     

    この画像は、上の2つはニュースですが、最後のものは健康食品等の広告として

    作成しました。還暦俳優の若々しさの秘密を紹介する体で、なんらかの商品を

    広告するページへのリンクになります。

     

    ユーザーはコンテンツを見たりナビゲーションに沿って進みたいのであって、

    広告を見たいわけではありません。広告はコンテンツ等と分けた場所に設置する、

    広告には「広告」「PR」等の表示を付ける等して、明確に区別をしなければなりません。

     

    プライバシーZUCKERING

    ユーザーをだまし、ユーザーが意図するよりも多くの個人情報を公開させるインターフェイスのことになります。

    プライバシーの過剰供給をさせる設計です。

     

    ブリヌル氏のサイトではFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグへのオマージュとしてティム・ジョーンズによって

    名付けられたと説明されています。

     

    この名がつけられた2010年からFacebookのインターフェイスは変更されていますが、このダークパターンに対して

    ザッカーバーグの名が冠された経緯や当時のFacebookのインターフェイスの問題点はティム・ジョーンズ氏による解説

    ぜひご覧ください。

     

    プライバシーZUCKERINGとして紹介させていただきましたが、

    「意図せざるプライバシーの過剰供給を引き起こすダークパターン」は様々なところで見られます。

     

    例えば、前回の当機構ブログで紹介した韓国のマップアプリでブックマークしていた場所が公開されていた問題

    その例になるかと思います。

     


     

    以上、5つの種類をご紹介いたしましたが、この他にもダークパターンとしてよくあげられるものに、

    下記のようなものがあります。

     

    ・隠れたコスト:ECサイト等で、最後の支払いの際に予期していない料金が発生する

    ・カートへの忍び込み:消費者が購入予定でなかった商品が勝手にカートに入れられる

    ・偽のカウントダウン:商品の在庫がわずかであるという虚偽で購入を促進する

    ・「メルマガ配信を希望する」等のチェックボックスに最初からチェックが入っている

     

    事業者としては、特に商品購入の際や料金が発生する契約の際、そして

    個人情報の取得や共有設定に関わる場面において、ユーザーが適切な判断ができるよう

    分かりやすいユーザーインターフェースを設計するべきでしょう。

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    一般社団法人日本プライバシー認証機構(JPAC)

    個人情報に関わる資格制度の運営や社員教育、認証付与など総合的ソリューションを提供し、個人情報保護の推進に貢献してまいります。

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